正月休みに読んで! 2017年、よかった本27冊

「記憶より記録」などと言っておきながらけっきょく、一度しか更新していなかったこのブログ…。それでも厚かましく2017年によかった本をメモがわりにあげていきたい。仕事で絡んだものは除外。2017年刊行のものを中心に選んだ。趣味的に、フィクションよりノンフィクションよりです。あしからず。

巨匠の心構え本かと思ったらスッゲー実務的な本でビビる 

 
 言わずと知れた『ジョジョの奇妙な冒険』の作者によるハウツー本。
「あー巨匠のこの手の本ってさあ、だいたい武勇伝と精神論でできてるよねー」という偏見を見事に覆して、ガチでキャラ設定や場面設定について語っている。
真正面からハウツー本として捉えるだけでなく、「友情・勝利・努力」と呼ばれる『ジャンプ的な価値観を作り手側からみた時にどうなるのか、という舞台裏的な楽しみ方もできる。
同業者のどなたかに飲みの席でオススメしてもらった本なのだが肝心な推薦者を忘れてしまった…。ありがとうございます。
 

教科書で習った宗教改革と、現在の国際政治が一本の線で繋がる楽しみ

 
 『応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱』の大ヒットでイケイケの中公新書から。
宗教改革というと、「ルターが教会に抗議文を貼って…」という中高で習った知識が思い出されるが、どうもこの本によれば、ルターは抗議文を貼ってないらしいw そうだったのか。
それはともかく、宗教改革は宗派が細かく分かれていき、最終的にはルター主義は、今の保守主義と結びつくことになる。へー。じゃあ、アメリカ的リベラリズムは? その答えはぜひ本書で。歴史がただのトリビアにとどまらず、その洞察から今の世界を見る手がかりとなっている点がもっとも面白いところだと思います。
 

事実と物語の狭間で

 同じく中公新書より。日本のノンフィクションの歴史を大宅壮一を軸にまとめた意欲的な一作。事実をもとに物語る、という、ともすれば矛盾してしまう、ノンフィクションの究極的な難しさに対して、日本の先人はどのように挑んだのか、これほど丹念にまとめた本は今のところ、他に読んだことがない。
歴史だけでなく、現在とこれからの展望について触れているのは、さすが自らも実作者でもある武田徹といったところ。
今後、日本のノンフィクションを研究するならば、必ず参照しなければならない資料になりそう。
 

町田康やばいwww

 
何はともあれ、町田康訳の宇治拾遺物語を読んでもらいたい。
「最高。今日、最高。でも、オレ的にはちょっと違う感じの踊りも見たいかな」
リーダーがそう言うのを聞いたとき、お爺さんのなかでなにかが弾けた。
お爺さんは心の底から思った。
踊りたい。
踊って踊って踊りまくりたい。 
 古典っていうか完全に町田康の小説っぽいじゃねえかw
訳文は古びるが原文は古びない、という趣旨のことは村上春樹がいろんなところで書いているが、 この作品は「どうせ古びるんだからなりふり構わず今風にしちゃえばいいんだよ」という思い切りがすごい。
よくあるような、第一人者の研究者が翻訳する、というのではなく、現役小説家だからこそ得られた収穫。全集編纂者の池澤夏樹にも座布団一枚。正直、あんまり日本の古典って興味がなかったんですが他のも読んでみたい。
 

変わり続けてきた街、東京。2020への変化も楽しんじゃおう 

 
 東京。ちょっと高いビルから街を眺めると、クレーンがニョキニョキ立って、あらゆるところで大きな工事が進んでいるのがわかる。2020年に向けて、街はどんどん変わっている。
ブラタモリのゲスト常連の著者が、江戸から遡って、街の成り立ちを紐解く。散歩が楽しくなる一冊。

 

知らなかったアメリカを知る 

 
 
 
 ニュースを扱う仕事をずっとしていた自分にとって、2016年のトランプ当選というのは、ものすごく大きな出来事だった。何を発信したところで、クラスターや層を超えて届いていかなければ何一つ、社会は変わっていかないのだ、という当たり前のことをガツンと突きつけられたからだ。ニューヨーク・タイムズを読みそうな人がその記事をシェアし、いかにもニューヨーク・タイムズを読みそうな友達に届いて…。いわゆる、エコーチェンバーというやつだ。
同時に、自分が見聞きしたり体験したアメリカというのはニューヨークやサンフランシスコというごく一部なんだというこれまた当たり前のことにも改めて気付かされた。
知らなかったアメリカを伝えてくれる日本語書籍として。
 

 僕らの世代が、「あの戦争」とどう向き合うか

 
豊富な資料と綿密な取材を重ねつつ、それをいわゆるノンフィクション風に、社会や歴史に還元していくのではないところが新鮮な一冊。
「親日国」とも言われるパラオが日本統治下でどんなものであったか。その実像を辿りつつ、受け止めた筆者がその考えをエッセイ風にまとめている。ガチのノンフィクションでもなければ、研究書でもない。もちろん、「行った見た感じた」だけの紀行文でもない。 
先の戦争というテーマに対しての距離感の取り方に、新鮮さを感じた。
ミュージシャンでもある著者は1981年生まれ。なるほど、同世代、僕たちの世代なりの、戦争との向き合いかたなのか。
あとがきが特に読みどころ。
 

『この世界の片隅に』のファンならきっと楽しめる  

 
この世界の片隅に』はよかった。今さらここで語るまでもないが、社会も政治もなくすずさんという一人の女性のミクロの視点から描かれる日常(=戦争)がリアルすぎた。
その興味から買ってみたのがこれ。戦時中についての投書を編集したものだ。市井の目から見た戦争が、これでもかというほど詰まっている。
初出は1969年で、朝の連ドラ「とと姉ちゃん」でおなじみ、花森安治の編集によるもの。
今買うなら再販のものでなく、あえて1969年版を古本で買う方がいいかもしれない。
 

 第一人者の叫びに耳を傾ける

 
 戦争ものといえば、1941年から始まる対米戦争をテーマとしたものがほとんど。だが齢八十を迎える、日本近代史の大家である著者は、あとがきでこう断言する。
 「太平洋戦争への道」については、すでに十分に知られています。保守も進歩も十分に反省してきました。しかし、「日中戦争への道」について日本国民の知識は、きわめて限られています。今日の日本人が万が一戦争に巻き込まれるとしたら、言うまでもなくそれは、アメリカの戦争ではなく、自国の中国との戦争でしょう。
 二度と日中戦争を起こしてはならない。そのためには一八七四年の台湾出兵に始まる「日中戦争への道」を知る必要がある。これが本書執筆の動機です。
 「立憲」勢力と「帝国」勢力のせめぎ合いであった、という見立てのもと、その後の対米戦争にも繋がっていく、日中戦争への道を丹念に解説している。
惜しいのは、一般向けにですます調で書かれているにも関わらず、図表、イラスト、脚註などがほとんどなく、専門書のような見た目になってしまっていること。加藤陽子の『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』のような体裁にすれば、もっと読まれたかもしれない。
今を生きる私たちに視座を与える一冊。 

 

 こういう文章を書きたい(大二病)

 
ちょっとひねくれているけど、知的でユーモアがあり、そして優しい。
ヴォネガットの遺作となったエッセイ集。案外、彼の入門には、一見、真面目なのかふざけているのかわからない小説群(ごめんなさい。大好きです)よりも、こっちの方がいいかもしれない。 
このエッセイにもよく表れているけれど、ヴォネガット風味というのはなんというのか、ポップだけど文化人、文化人だけどポップ、みたいな、ある種、象徴的な存在で、その影響はすごく大きいと思う。(絶版になった単行本の推薦文は爆笑問題・太田光によるもの…)
善が悪に勝てないこともない。
ただ、そのためには天使が
マフィアなみに組織化される必要がある。
 大二病から抜けられない僕と皆さんにおすすめ。

 

 こういうテーマ史がもっと読みたい

 
だんだん疲れてきた…。少し簡略な説明になっていきます。
コンテナという箱の発明で、どれだけ物流、ひいては社会が発展したかを詳細に追ったノンフィクション。『銃・病原菌・鉄』とか『サピエンス全史』とかを楽しめる人なら、きっと気に入ってもらえるはず。
あるテーマから歴史を掘り下げていくタイプのノンフィクション、日本ではあまり見かけない気がする。なんででしょうね? もし良いものをご存知でしたら教えてください。
 

 本屋で出会わなければ読まなかったで賞

 
カタツムリが生物進化の研究の鍵を握っていた…。
行っては戻り、戻ってはゆく。螺旋を描くカタツムリの殻のように、生物の進化の謎を追う人間の研究も、論争を繰り返して、徐々に発展していく。
120%文系人間の僕では、決してAmazonで出会えなかった本。書店の平積みリコメンドで買えました。 これだから、本屋通いはやめられない。
 

物語をどう分析するのか。まずはここから。

 
 Twitterやブログで誰でも情報発信ができるようになった今、作品について評論するという行為は、学者やジャーナリストが読者のためにするものではなく、作品を味わった人がもっぱら楽しみのためにする行為に変わりつつあるように思う。
とはいえ、「どうやって物語を分析するの…」と途方にくれるのもまた確か。「こう思った」「〜と感じた」だけでは感想文にはなっても、分析や評論にはならないからだ。
 そこで、アカデミズム、フランス構造主義の観点から物語の分析法を提示してくれるのがこの本だ。使われる素材も、ガルシア・マルケスのような「いかにも」な作品もあるが、「シン・ゴジラ」「この世界の片隅に」まで幅広く、とっつきやすい。
自分自身、この本を3回くらい読んでから、ありとあらゆる作品への接し方が変わったように思う。「何を」描いているかだけでなく、時制、語り手は誰か、といった「どう描いているか」をより詳細に見るようになった。
物語の構造を知る、という意味で編集者やライターにおすすめしたい。ほんとこれめっちゃ良い本ですよ。
 

「作者の意図の深読み」はアリ? ナシ? 

 
 批評についてもう一冊。
客観的な批評とは可能なのか。そのために必要な作業は? 作者の意図は批評にどう関わるのか? 歴史の中に作品を位置付ける行為の意味は?
作品と批評という行為について、このくらい明確にアジェンダセッティングして書かれている本は、あまり見たことがなかった。
筆者の主張は『理由に基づいた評価づけ』が重要で、分析、解釈、分類などの作業は、評価づけのためにある、というもの。そうやって言われると当たり前のような気もするが、本文を読むとまあなかなか一筋縄ではいかない。
専門書なので読みこなすのにある程度時間がかかるが、一度わかってしまうと、頭がぱーっとクリアになったような気がする。
もう何回か自分も読んでみたい。
 

 野球とデータ好きならめっちゃ楽しい一冊

 
どうせなら勉強は楽しくしたほうがいい。
統計とセイバーメトリクスの基礎がいっぺんに学べちゃう。この本で使っているソフトはExcelで、コマンド入力が必要なRやPythonではないので敷居は低い。筆者群は、日本プロ野球のデータを集めているDELTAの人たちなので間違いなし、です。この本を軸に、あとは統計だけの入門書でわからないところに当たれば初級編はクリアできそうな感じ。
 

ビジネス本にあらず。偉大な研究史であり、データベースでもある2冊 

 
 
 
驚いた。なさそうでなかった本だ。
アイデアや問題解決の分野は、そりゃもう、ピンからキリまで世の中に山ほど本がある激戦区。だからこそ、世の本はそこに、流行りの経営者やアスリートといった「権威」を持ち出して差別化する。
だがこの2冊は全然違う。
これまで研究されてきた手法をデータベース化し、その運用方法を詰め込んであるのだ。とはいっても、ただの辞書ではなく、頭から読み、後ろに行くにしたがって内容がより、高度になっていく作りになっている。各項目はその手法の成り立ちも記されていて、硏究史的な内容も含んでいる。
これを読んでしまうと、いかに世の多くのビジネス本は、ここに書いてあるいくつかの項目を引用しつつ、自分の武勇伝と、さらに「周りに感謝」的な一般論を混ぜて一冊の本に仕立てているかがわかる。言ってみれば、「ビジネス書の原液」みたいな本なのだ。
困った時にパラパラめくれるように、電子書籍よりかは紙の本で持っていたほうがいいと思う。
それにしても、「読書猿」とは人を食ったようなペンネームではないか。博覧強記ぶりには驚きました。今年最大の発見。
 

今時の難しい問題を考えるのに、道具となる一冊 

 
大学生向けの教科書だが、今時の政治的なイシューがぎゅっと詰まっていて、変な新書を買うよりよっぽど、おトクな本。新書というのはその分野の大家が書くこともあれば、目立つ言説をするトンデモ学者が書くこともあって、門外漢にはなかなかその本がマトモかどうかわからない。そういった分野のとっかかりに一番いいのは、教科書だ。
とりあえず目次をみれば、これがただの教科書でなくて、「今時感」のある本だということがわかると思う。
第1章 政治理論の始め方
第2章 政治とは何か?
第3章 「私の勝手」で済むか?──リベラリズム
第4章 どうして助け合わなければいけないのか?──分配的正義論
第5章 あなたも「不正義」に加担している?──グローバル正義論
第6章 みんなで決めたほうがよい?──民主主義/自由民主主義
第7章 多数決で決めればよい?──熟議民主主義とラディカル・デモクラシー
第8章 民主主義は国境を越えるか?──グローバル民主主義
第9章 「私」とは誰か?──政治理論における個人
第10章 私は何をどこまでできるのか?/できないのか?──権力論
第11章 「私のこと」も政治か?──政治理論としてのフェミニズム
第12章 「国民である」とはどういうことか?──ナショナリズム
第13章 異文化体験でわかりあえるか?──多文化主義
第14章 公共性はどこにある?──市民社会論・コミュニティ論
第15章 「市民である」とはどういうことか?──シティズンシップ
これも、ライターや編集者のリファレンスとして置いておくのに適した本だなと。
ちなみに、有斐閣ストゥディアはハズレが少なくて、いつも新刊を楽しみにしている。
 

視点をズラす日常の心がけ

 
 「観察とは、日常にある違和感に、気づくこと」
僕らは普段、街を歩いていも何か考え事をしていたり、スマホを見ていたり、周りのことは見えているようでほとんで見えていない。
しかしそこには人の営みがあり、自然があり、そして必ず、「ちょっと変なこと」が潜んでいる。たとえば良質なエッセイは、そうした物事をすくいあげ、「こんなことってあるよね」と問いかける。
左ページの写真を見て、何に気づくか。その行為を通じて、「観察の練習」をしようというのが本書の試みだ。だが、この本が、クイズ本なのかと言われると全然違う。様々な書体を凝らした本文や、重量のある紙質、辞書のような装丁。エッセイのような、アート本のような、なんとも言えない「ちょっと変な」存在感を醸し出しているのだ。
本に出会う前と後で、少し、世の中の見方が変わる。モノとしての魅力も含めて、本に出会う楽しみを凝縮したような一冊だ。
 

自分のための料理が楽しくなる

 
10万部越えのベストセラー。よそ行きのオシャレ料理でも、「一汁一菜」「シンプルライフ」みたいなライフスタイル提案でもない。「家で、なるべく簡単に、しかも美味しく作る自分のための飯」に絞っているところが本当に素敵。
何かを作りたい、という明確な欲求がある場合は、今時、インターネット上にいくらでもレシピがある。だからこそ今時のレシピ本には、ただのデータベースでなく、著者の知名度や、「インスタ映え」とか「シンプルライフ」とか、コンセプトや、思想なりを押し出す必要がある。そこをオシャレの方向に行かず、一見、ネットにありふれてそうで避けがちな、「なるべく簡単で美味いもの」に突き詰めて考えているのが素晴らしい。本音で普段着だけど、ただのデータベースでなく、一本筋の通ったレシピ集、って感じです。きっと著者の方は考えたんだろうな。企画した編集の方も含めて、尊敬します。
 

日本人のための第一次世界大戦史

 
戦争に至る経緯を経済の側面から読み直した本で、特に日本人には馴染みの薄い、第一次大戦に焦点を当てているのが面白い。 歴史についてはどうしても政治の側面から語られることが多いが、国際政治の問題には、カネや資源、技術の話はいつでもついて回る。グローバリズムの第一歩としての一次大戦が描かれている。
ちなみに、この人の本は間違いない、と思える筆者の一人。 『金融の世界史: バブルと戦争と株式市場 』『日露戦争、資金調達の戦い―高橋是清と欧米バンカーたち』も同じく、カネから見た歴史がテーマだ。面白いよ。
 

 みんな大好きヤマトの、みんなが知らない話

 
カリスマ企業、ヤマト運輸の創業者で、長く読み継がれる経営書『経営学』の著者でもある小倉昌男についてのノンフィクション。といってもこれは、ありがちな起業成功物語でないところが面白いところ。なぜ、晩年になって福祉事業を始めたのか。構成の妙と謎解きの要素もあいまって、ページをめくる手が止まらない。
冷静な筆致ながらも終盤に向けて盛り上げていく描き方とかもすごく勉強になった。 
ノンフィクション賞を総なめにしたのも頷ける一冊。 
 

極限状態で、人は何を考え、どう行動するのか 

 
Inviting Disaster: Lessons from the Edge of Technology が原題。直訳だったら目に止まらなかったかもしれない。賛否あるだろうが、ウェブの記事っぽい、人の興味を引きつけるうまい邦題だと思う。
原子力発電所、ジャンボ機、爆薬工場、化学プラント、核ミサイル基地といった、ひとたび事故が起きれば人間に制御できない災厄を起こす場所で、人はどのように考え、行動したのかを綴ったノンフィクション。先に紹介した『コンテナ物語』同様、スケールの大きなテーマ史だ。
名著『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』なんかが好きな人にはうってつけ。こういう本を、「今すぐに役には立たないけれど、長い目で見て役に立つ本」なのだと思う。
 

 浮いたって、いいじゃない

 
 気鋭の哲学者による勉強論。学ぶことは自分を変革することであり、それは少し周りからは浮いてしまうことだ、と説く。
「東大・京大でいま1番読まれている本」と帯にはあるが、どちらかというと、学ぶのが好きな中学生や高校生が多少背伸びしてでも読んで、勇気付けられることの方が多いかもしれない。「テスト勉強? やってねーよ」ではないけれど、あの年頃って勉強がかっこ悪いことのように見えるから。
知人の書店員さんが「こういう本売れると嬉しいなあ」と言っていたけど、その気持ちはわかる。知るのって楽しいよね。
 

人を生かし、殺しもしたトラクター 

 
この本を読むまでトラクターについて、少しもじっくり考えたこともなかった。
馬や牛の代わりとなって、農業生産効率を飛躍的に上げ、そして戦車の原型となり兵器にも変わったトラクター。人を生かし、殺しもしたトラクターからみる人類史が面白い。
『怒りの葡萄』で有名なスタインベックは、トラクターの存在をレイプに比喩している。なぜか? 続きはどうか本書で。
トラクターになんの興味もなくても、いやむしろないほど楽しめます。
 

 今を、未来を生きる人のための哲学

 
哲学って、どこかこう、日々を生きる自分たちのような人間にとって関係のない、インテリたちのものというイメージがある。
だけどこの本はそうじゃない。
この分断された、でもインターネットで繋がっている社会をよりよいものにしていくには?
という真っ当な、現代的な問いに対して、真正面から取り組んでいるのに心動かされた。
曰く、——遊び半分で真面目ではない、でも興味をそそられてやって来る「観光客」的な存在が、壁を越境する。ひょっとすると、本来届くべきでない人たちに偶然、届いてしまった、「誤配」されたものによって、人の認識が変わっていく——
めっちゃ簡単にまとめてしまったが、こうしたモデルを、既存の哲学のバックグラウンドをベースに丹念に説いていく。
正直に言って僕も十分に理解できているとは思えないけれど、これが哲学者の仕事なのかと、素直に感心した。
読んだ後に不思議と希望が残る一冊だった。
 
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番外編:
初出原稿のいくつかに関わった、『リスクと生きる、死者と生きる』も思い入れ深いです。
 
溜めすぎてて書くのが大変だった。今年はマメにメモしよう。よい本に出会えますように。
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